UAE後の腹腔鏡下筋腫核出術(1)

大きな筋層内筋腫の患者さんのUAEの経験です。日本在住の外国人の方でどうしても開腹手術を受けたくない、かといって腹腔鏡下では難しいといわれた方でした。
UAEにより筋腫の大部分が梗塞になり結果かなり縮小し満足されていましたが2年ほどして再増大し始めたため再UAEをすることになりました。
UAEは原則左右の子宮動脈を塞栓します。初回UAEでは左右の子宮動脈を塞栓しましたが、再UAE時には右の子宮動脈は閉塞し、左の子宮動脈と右の卵巣動脈から子宮筋腫への血流が認められたため、左子宮動脈と右卵巣動脈を塞栓しました。筋腫は完全梗塞となり1年後にはかなり小さくなりました。
卵巣動脈を塞栓すると卵巣の機能が落ちるのではないかと危惧されるのですが、月経は正常で卵巣を刺激するホルモンであるFSHも上昇は認められませんでした。
その後も経過を見ていましたがMRIで造影をすると筋腫の内部がわずかに造影効果が認められるようになりました。腹腔鏡でも充分に核出できると判断したので患者さんにそのように伝え、関連病院に依頼をしたところ手術待ちが1年ほどだというのです。
また信頼できる施設へ紹介状を持たせたのですが、そこでも1年待たなくてはならないということでした。
結局患者さんの強い希望でもう一度UAEをすることになりました。
再UAEは他院で行われたものも含めて経験がありましたが3度というのは初めてでした。
血管造影では子宮への血流は左子宮動脈と右卵巣動脈でしたのでそれぞれ塞栓しました。
UAE後の造影MRIでは筋腫内部に認められたわずかな造影効果はまったく認められなくなりました。この患者さんは実によく勉強している方で、血管塞栓をしても腫瘍が新たに栄養血管を作るようになればまた増大するということをよく知っていました。「あなたの筋腫はUAEに対して抵抗性がある筋腫かもしれない。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を産生するような筋腫かもしれない。すぐにというわけではないが筋腫は取ったほうがいいかもしれません。」とお話していました。しばらくしてその患者さんは以前に持たせた紹介状を持って腹腔鏡下核出術を受けたのでした。その施設から術中所見と紹介状に対する返事のお手紙が届きました。