子宮腺筋症に対するUAE(3)

自分の経験の他、内外の文献、UAEを行っている医師らの情報交換等から塞栓物質をやや小さくし、強く塞栓することによって腺筋症病変部の梗塞を起こすことができ、より長期にわたって症状を緩和させることが可能となることがわかってきました。
2010年4月に行なわれる、日本医学放射線学会総会に演題を応募したところ採択されましたので、抄録を載せておきます。

子宮腺筋症に対するポンピング法ゼラチンスポンジによるUAE


【目的】ポンピング法によって作製されたGelfoamを塞栓物質とした子宮腺筋症に対する子宮動脈塞栓術(UAE)の治療効果を検討。
【対象・方法】2003年4月~2009年9月までに連続してUAEを施行した子宮腺筋症76例を検討。UAE施行時29-54(平均43.8)歳。筋腫合併43例(56.6%)。検討項目:MRI、CA125、FSH、臨床症状。経過観察期間:1-77(平均27.3)ヶ月。
塞栓血管は両側子宮動脈74例、右子宮動脈のみ1例(左子宮動脈欠損のため)、両側子宮動脈+右卵巣動脈1例。十分にポンピングしたGelfoamのみを使用し、DSA上、子宮動脈水平枝が完全に消失するまで塞栓。全例にUAE前後のMRIを施行し、UAE後1ヶ月の造影MRIで腺筋症病変部の梗塞領域によりA群(完全梗塞)、B群(不完全であるが梗塞領域は50%以上)、C群(不完全で梗塞領域は50%未満、もしくは梗塞領域を認めない)に分類。
【結果】A群47例(47/76=61.8%)B群15例(15/76=19.7%)C群14例(14/76=18.4%)を得た。13症例(17.1%)に経過観察中に何らかの症状再燃が認められ、再燃までの期間はUAE後3~43(平均20.8)ヶ月。再治療は8例(10.5%:ATH3例、GnRHa5例)で再治療率はA、B、C群でそれぞれ4.3%(2/47)、20%(3/15)、21.4%(3/14)。
UAE後の永久的無月経は10例でUAE施行時いずれも45歳以上。A,B,C群の順にCA125の正常化が著明。44歳以下(33例)ではUAE後1年以内のFSHの一過性上昇を1例にのみ認めた。
【結論】ポンピング法ゼラチンスポンジによるUAEは子宮腺筋症治療の選択肢の一つになり得る。

つまりいままでの経験から子宮腺筋症の場合UAEによって60%の患者さんは病変部の完全梗塞が起き、再治療を要したのはわずか4%であったのに対し、不完全梗塞の場合は20%が再治療を要したということです。
しかし、逆に言うと不完全梗塞になった場合でも80%の患者さんは再治療が不要ということであれば、UAEという治療を腺筋症治療のオプションの一つとしてもよいのではないかということです。
もちろん経過観察期間が最長6年程度ですのでより長期にわたった場合は再発が出てくるとは思いますが、腺筋症に悩まされる年齢が平均40歳代ということを考慮すると十分に治療のオプションとなりえると思います。