放射線被曝は過小評価してはいけない

UAEの欠点として放射線被曝があげられます。UAEによる放射線被曝は急性、慢性の放射線障害、遺伝的影響に関連するとはいえないとされています。

Patient Radiation Dose Associated with Uterine Artery Embolization

Nikolic.B,et al      Radiology : 214, 121-125 , January 2000

The estimated absorbed ovarian dose during UAE is greater than that during common fluoroscopic procedures. On the basis of the known risks of pelvic irradiation for Hodgkin disease, the dose associated with UAE is unlikely to result in acute or long-term radiation injury to the patient or to a measurable increase in the genetic risk to the patient‘s future children.

UAEは急性、慢性の放射線障害や子供への遺伝的影響に関連するとはいえない。


しかしこれには条件があります。いくら放射線障害が少ないといっても無条件に長時間の透視を行えば放射線障害は出るのです

Uterine Arterial Embolization: Factors Influencing Patient Radiation Exposure

Andrew R T, et al    Radiology : 217, 713-722. December 2000

With operator experience and careful technique, uterine arterial embolization can be performed at radiation exposures comparable to those used in routine diagnostic studies.

術者の経験や注意深い技術によりUAEは通常の診断に匹敵する放射線被曝で行いうる。


 
ここでははっきりと術者の経験と技量をのべています。つまり術者の経験や技量によってはルーチンの放射線診断に使われる被曝線量を超えてしまうということです。
 
ではどの程度の被曝線量でUAEを行えばよいのでしょうか。 私は私なりの基準を持っています。
一度に650mG(ミリグレイ)以上の線量を卵巣に当てると一時的不妊になります。要した総被曝線量の10~30%が卵巣に当たるとされているので、過小評価せずに30%が当たるとします。総被曝線量が2000mGとすればその30%は600mG。ですから2000mG以内、すなわち2G以内としています。この2Gという数値はあなどれない数値であり、機種、患者さんの体格によっては20分程度の透視時間で簡単に超えてしまいます。
 
UAEの被曝はあなどれないのです。

あけましておめでとうございます。

2012年1月は既に10例のUAEが予定されています。昨年中にのべ2000症例を突破して改めてUAEの治療効果、術後回復の速さ、患者さんの満足度の高さを再確認しています。
反面、極めて少数ですが患者さんの希望通りにいかないこともあり、UAE適応の難しさをも再確認しました。

私は10年前に学会でこう発言したことがあります。
http://www3.ocn.ne.jp/~embo/workshop.htm#ws2-3