保険適応後の子宮動脈塞栓術

エンボスフィアが子宮筋腫に対する動脈塞栓術の塞栓物質として保険適応となる以前はゼラチンスポンジを塞栓物質として使用していました。もっともエンボスフィアは高分子ポリマーとゼラチンから成っているのでゼラチンを使用していることには違いはありません。ゼラチンスポンジを塞栓物質とした場合、カテーテルにより多少血流が悪くなったり、多少カテーテルがウエッジした状態でもゼラチンスポンジは注入することができました。なによりそれでも非常に良好な成績を出していました。一方エンボスフィアの場合はそうはいかないことがわかりました。エンボスフィアは血流に乗ってゆっくりと末梢に進むので血流が停滞していると末梢に移動しないばかりでなく容易にオーバーフローして異所性塞栓を起こしてしまいます。つまり合併症の原因となってしまいます。ゼラチンスポンジを使用していた頃は大多数の症例で4フレンチサイズ(径1.3mm)の毛利型カテーテル1本でUAEを行っていました。子宮動脈が細い時やカテーテルをもっと奥まで挿入したいときのみ時々マイクロカテーテルを併用していました。平均透視時間は8-9分で、早いときは穿刺からカテーテル抜去まで10分以内ということもありました。欧米からの論文によるとUAEの平均透視時間は23分程度であったので「ずいぶんと遅いもんだ、日本人の方が手先が器用なんだろう。」程度に思っていました。 ところが自分がエンボスフィアを使用するようになってこの考えは一転しました。まずフリーフローを保ったままでカテーテルを十分に挿入しなくてはなりません。マイクロカテーテルの併用はほぼ必須です。その上塞栓物質であるエンボスフィアはゆっくりと流れていくので透視時間は延長します。最近は透視時間が10分を切ることもありますが、14-5分かかることはざらです。さらに欧米の透視時間のデータも以前より早くなってきており14-5分ということなのでなんら差はないことになります。よく日本人は手先が器用といいますが、ピアノやヴァイオリンの演奏を見聞きしていると、人種に差がないことがことがわかります。サッカーの足技もそうです。(この場合は手ではないですが)もっとも楽器の演奏もカテーテルも手先の器用さだけでやっているわけではありません。エンボスフィアを使用するようになってからUAEの手技の工程を一つずつ確認するようになりました。特に子宮動脈に選択的に挿入する時がそうです。スパスムを起こさず、フリーフローを保ち、ウエッジしない。そのために、4フレンチサイズの親カテを子宮動脈に入れるのか入れないのか、マイクロカテーテルを先行させるのか、マイクロガイドワイヤーを先行させるのか、マイクロカテーテルの形状はどんなのがいいのか、また挿入困難時の子宮動脈の起始部の分岐角度や形状はどうなっているのかなど細かな点まで確認するようになりました。UAEを開始した当初(1998年頃)は血管撮影の所見をスケッチしていました。今はスケッチすることはありませんがUAEを終えたらその日のうちにモニターで所見を見直し、レポートを書いています。手術で言えばオペ記事を書くのと一緒です。挿入困難な場合はこれこれのため挿入困難、○○カテーテルに変えて挿入可能となり、、のようにあとから見た場合にもすぐわかるようにしています。そうすると挿入困難な場合はどの程度あるのか、どういった場合が難しいのかがおのずとわかるようになってきます。やはり経験症例は多くなくてはいけない所以です。 今年は11月半ばですでに142例を施行。今後予定されているだけで19症例、初診待ちも30人以上です。今年は160例あまりを経験することとなるでしょう。来年は200例を行うつもりでやって行きたいと思っています。

UAE症例数はまもなく2400例に

UAEが保険適用となり患者さんにとっても選択しやすくなりました。本年8月は26例、9月10例、10月23例を行い(9月は夏休みをいただきましたので)ました。 UAE後1週間目は原則としてチェックしますので1週間休む場合その週の前の週はUAEはしません。 ついこの間、UAE総症例数が2340例になったのですが3ヶ月で59例を行い、11月は予定されているだけで17例、初診待ちが35人以上という状態です。2014年は150症例以上のUAEを行うことになるでしょう。まもなく2400症例ということになります。 エンボスフィアでのUAE症例も130例以上となり少しはモノが言える様になりました。ちょうどこのタイミングでラジオ日本の医療番組に出演することとなりました。

UAEのメリット

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEも116例となり、来週は6例、再来週は5例が予定されており10月中に127例に達する見込みです。手技に要する透視時間も10分程度と短くなってきました。 UAEのメリット・デメリットを考慮するとき、放射線被曝がデメリットしてあげられます。手技時間の短縮が放射線被曝の減少に直結するので短時間で手技を終えるということは重要なのですが、パルス透視を使用して放射線を出しっぱなしにしないことも被曝低減に一役買います。今までは7.5F/sで手技を行っていましたが、モニターに映し出される画像が十分すぎるほどよく見えるため5F/sで手技を行ったところ差し障りがありませんでした。そこで3F/sまで落としてみました。さすがに秒間3パルスではカテーテル、ガイドワイヤー操作に困難を感じたのですが、塞栓物質の注入中は問題がありませんでした。大幅に被曝低減が可能になりました。デメリットの一つを極力最小にすることができたのです。被曝が少なくなるということは患者さんだけでなく術者、スタッフ、血管造影室にいるすべての人への被曝低減につながります。それからUAEのデメリットの一つであった「保険がきかず費用が高い」は保険適用となったため「費用が安い」となりメリットになりました。 開腹子宮全摘術、核出術、腹腔鏡下手術のいずれよりも費用が安いのです。

痛みが少ないエンボスフィア

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEは100症例を越え、UAE総症例数は2340例となりました。2014年は9月で100例を突破したのでこのままのペースでいけば本年は130~140例になると見込まれます。例年は100例どまりであったのですがこの症例の伸びはUAEに使用される塞栓物質であるエンボスフィアが保険適応となったことが大きな要因であることは言うまでもありません。ところでエンボスフィアは500-700μのサイズを使用します。筋腫周囲の血管網はperifibroid plexusと呼ばれ平均650μであることが知られています。一方utero-ovarian anastomosis,cervico-vaginal branchの血管径は500μ以下ですので500-700μのサイズを使用すれば理論的には筋腫だけを塞栓することができます。エンボスフィアでのUAEの痛みが少ないのはこのためです。エンボスフィアは時間とともに血流に流されて末梢に移動しますがこの血流が生理的なものでなくカテーテルにより妨げられていればカテーテルを抜いた後、末梢に移動し塞栓不足になります。また時間とともに末梢に移動するのでエンドポイントを決めにくい場合があります。これらは経験はもとより手技、血管造影像、術前術後のMRI画像をよく検討し、結果をフィードバックすることにより解決できます。本年2月にエンボスフィアが保険収載され約半年程度で100症例を経験することができました。この程度経験すると指先に感覚がうずくようになります。エンボスフィアは私にとってもはや未知の塞栓物質ではなくなりました。

UAE症例は2300例に

エンボスフィアでのUAEも60症例となりUAE総症例数は2300例に達したようです。先週は第9回日本IVR学会関東地方会に出席してきました。学会での最大の収穫は演題ではなく企業が展示していた球状塞栓物質の模型でした。実際に使用されるマイクロカテーテルから球状塞栓物質がどのように出てどのように流れるのかを直視できます。もちろん人体の血管とはいささか勝手が違いますが、塞栓方法を体得するのに一役買います。この模型には黒山の人だかり、といいたいところですが私がしばらく独占してしまいました。

第43回日本IVR学会総会(2)

学会2日目は特別企画で私が聴講したかったDr.Piscoの講演がありました。Dr.Piscoは多数のUAE症例だけではなく、前立腺肥大症に対する動脈塞栓術(PAE)も700例以上の経験をお持ちのパイオニアです。特別企画ではUAEではなくPAEについて講演されましたが、自分のセッションが終わると会場を出て行きました。前方席に座っていた私も後を追うようにして、質問しました。 質問内容 1.UAE後の妊娠率が約50%と高いが患者さんを選んでいるのか? 2.PAEでは何種類かの塞栓物質が使用されているが何がいいのか? の2点でした。 1.に関しては、症状のある筋腫を対象としているだけである。 2.何でもよい(エンボスフィアでもPVAでも、、) ということでした。私は子宮筋腫に対するUAEは2000例を経験しているが、先生の妊娠率の高さには驚いていると話すと、2000例という数にいささか驚き、私にメールアドレスをくれて、一度ポルトガルにいらっしゃいと言ってくれました。 本当は2200例以上ですが、少なめに言いました。

第43回日本IVR学会総会(1)

6月5日から7日まで奈良で開催された第43回日本IVR学会総会に参加してきました。本年度からいわゆるビーズと呼ばれる非吸収性球状塞栓物質が正式に認可され保険収載となったためビーズに関する話題が多く、実際にUAEに使用される塞栓物質でもあるためビーズの情報を極力得ることが参加目的の一つでした。もう一つはヨーロッパのIVR医で、多数のUAE後の妊娠、出産例を持っておりそれを論文にしているDr.Piscoの講演があり、直接UAEに関する質問をすることでした。

 6月5日は学会初日で午前中は内臓動脈瘤のセッションを聴講しました。巨大な脾動脈瘤の症例の他、腎動脈瘤の症例が議論されました。どの分野もそうですが、適応と治療戦略がもっとも大事です。今ではカテーテルやガイドワイヤーが発達していますし、塞栓物質、コイル、ステントもさまざまなものがあるので昔だったらお手上げの症例も血管内治療で治すことができます。戦略によって器具の使い分けが必要になってきますし、治療の限界、合併症、長期効果も知っていなくてはなりません。何より術者の技量が大きく関与します。

ランチョンセミナーではDCビーズを使用した肝細胞癌治療について、ワークショップは産科出血でこれは手技はUAEそのものであり治療対象が筋腫や腺筋症でなく大量出血に対してです。引き続き、一般講演ー「救急」、Dr.GoodwinによるSIRレクチャー Global Interventional Radiology、技術教育セミナー 『門脈圧亢進症』 スポンサードセッション AMPLAZER Vasculaar Plugと聴講しあっという間に夕方6時半になりました。

エンボスフィアによるUAE後の妊娠



日本では2014年2月からエンボスフィアが子宮筋腫の動脈塞栓術に保険適応となりましたが欧米ではすでに広く用いられていました。ではエンボスフィアによるUAE後の妊娠の状況はどうでしょうか。スペインからの報告がありますので紹介します。

 Pregnancy after uterine fibroid embolization: follow-up of 100 patients embolized using tris-acryl gelatin microspheres
Fertility and SterilityVolume 90, Issue 6, Pages 2356–2360, December 2008
100症例のUAE、うち57例が挙児希望。UAE後の妊娠は11症例。つまり19%の妊娠率ということになります。この論文によると40歳未満に限ると妊娠率は50%であり非常に高いということになります。早期流産の割合は27%、帝王切開率は50%。

 どういった塞栓の仕方をしているか興味があったのですが、妊娠した10例のうち8例が700-900μのサイズから塞栓していました。通常は500-700μからスタートするのですが、おそらく術者はマイルドな塞栓を考慮してやや大きめのサイズで塞栓したものと思われます。

挙児希望者にUAEは第一選択にはなりませんが、実際の臨床の現場ではそういかないことも少なくありません。 日本での状況はゼラチンスポンジでのUAEに慣れていたわけですが、新たにエンボスフィアという塞栓物質が使用できるわけで術者も選択肢の幅が広がったとpositiveに考えるべきと思います。

ジノ・フランチェスカッテイ

------若いヴィルトゥオーソは、練習している曲にあまりにも早く飽きてしまいがちである。彼らは薄れ行く興味を育て直すことはせず、その曲を弾くたびに、なにかを付け加えたり、楽譜になにか特別の意味を付与しようとすることには関心を示さない、、、常に完璧性を求め、音楽的にも、テクニックの点からもその曲の表現に工夫を加えていくべきである。またたえずフィンガリングの改善を試みていくべきである。大演奏家の多くが、たくさんのレパートリーをもっているわけではないが、彼らは何年にもわたってそのレパートリーについて考え、練習を続けているのである。メンデルスゾーンの協奏曲のように何度も演奏しているものでさえ、演奏するたびに、よりよい演奏をし、さらに優れた仕上げを試み、細部を磨き上げなければならない。----ジノ・フランチェスカッティ------

私はこの言葉が気に入っています。フランチェスカッティは1902年マルセイユ生まれのヴァイオリニストでミルスタイン同様に来日したことのない演奏家の一人ですが、その輝かしい音色、卓越した技巧で20世紀を代表する巨匠です。曲をUAEに当てはめてみましょう。UAEはカテーテルを左右の子宮動脈に選択的に挿入し塞栓物質を流し込むというきわめて単純な手技です。ある程度トレーニングを積めばそれほど困難なくできるようになります。手技のみを考えて見ます。極力フリーフローの状態で塞栓物質を流し込むことが必要とされていますが理論的にはカテーテルを十分に挿入すればするほどフリーフローから遠ざかることになります。事実どんなに愛護的なカテーテル操作を行っても塞栓終了時に子宮動脈本幹にスパスムが起きていることはしばしば経験します。細くしなやかなカテーテルを使用すれば奥まで挿入できて血管への刺激も少ないと考えますが、細くなると塞栓物質が通過しませんし十分な量の造影剤も流し込めませんので良好な造影所見を得にくくなります。またエンボスフィアは500μ以上のサイズを使用しますので少なくともカテーテル内腔は500μ以上なくてはいけません。実際には良好な子宮動脈造影が欠かせません。少なくとも良好な造影所見なしに塞栓物質を注入すべきではないのです。理由は子宮動静脈瘻、子宮動静脈奇形などA-Vシャントがあった場合、塞栓物質がすり抜けて静脈系に入り込み肺塞栓症を起こしえるからです。(A-Vシャントがなくても起こしえる。つまり骨盤内に静脈を圧迫しえる腫瘤を持った人が対象になること、またUAE後は一過性に凝固能が亢進します。子宮動静脈瘻、子宮動静脈奇形は極めてまれな疾患ですが、私は年間100症例はUAEを行っているのです。数をこなせばそういった疾患に遭遇する可能性は高くなります。)。そうすると選択的子宮動脈造影は少なくとも4F程度のカテーテルで良好な造影所見を得たのち、4Fカテーテルはなるべく深く挿入せずすぐにマイクロカテーテルを使用して十分に挿入する。ということになります。しかし、自動注入器を使用し、ハイフロー型マイクロカテーテルを使用すれば造影剤も十分量注入可能ですからこの限りではないことにもなります。一般に塞栓療法の対象は大部分が肝臓癌をはじめとする悪性腫瘍で、2度3度と治療を反復することを前提に行われます。一方UAEは良性腫瘍であり、患者さんも治療する方も極力1回の治療で済ませたいと考えます。長期的にみれば再発、再UAEもありえますが、原則1回で決めたい。1回の手技で筋腫核のすべてを完全に梗塞にする必要かつ十分な塞栓を求めて常に工夫し改善し細部にわたって磨き上げねばならないのです。フランチェスカッティの言葉にまさに共通しています。

エンボスフィアでの子宮動脈塞栓術(3)

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEものべ30症例になりました。今週は5症例を行いました。透視時間は10分台から17分台で平均13,5分でした。エンボスフィアはゆっくりと末梢に流れていくためどうしてもエンドポイントが決めにくい。このため撮影回数が増えて透視時間も長引く傾向にあります。ゼラチンスポンジン場合はすぐに詰まりエンドポイントも決めやすい。ひいては透視時間は短縮され使用する造影剤も少量で済みます。
エンボスフィアでのUAEはいかに透視時間を短く、かつ造影剤の量を少なくするかが課題でした。当初は透視に20分程度かかっていたのが13-4分になってきました。造影剤も
以前より少量となってきました。ここまでくるのに30症例の経験が必要でした。
また塞栓前の造影所見を見ただけでおおよそどの程度の量のエンボスフィアが必要となるのかもわかってきました。そうなるとエンボスフィアを注入している間、ずっと透視を出している必要はなくなってきます。ひいては透視時間も短くなり、手技にかかる時間も短くなります。

エンボスフィアでの子宮動脈塞栓術(2)

本年2月以降にエンボスフィアを塞栓物質としたUAEを25症例行いました。UAEを行った後はその血管造影像を見直し、施術後の造影MRIを見、フィードバックすることにより塞栓のさじ加減を習得します。
短期間にある一定の症例をこなさないとどうしても習得は難しく、逆に短期間で集中的に症例数をこなすことにより、より効果的に習得できます。
25症例の内訳は透視時間は6分55秒から33分に分布、平均20分42秒。使用したエンボスフィアは1バイアルから11バイアルに分布、平均4.6バイアルでした。塞栓効果はpumping法によるゼラチンスポンジの場合と比較して差はないようです。
ただUAE後の疼痛に関してはエンボスフィアの方が少ないようです。
子宮筋腫はいわゆるcommon diseaseです。ですからその治療は「確立」されており「安定供給」されていなければいけません。

エンボスフィアでの子宮動脈塞栓術(1)

2月に入りエンボスフィアでのUAEを2症例を続けて施行しました。いずれも多発性子宮筋腫の患者さんです。

2月某日午前。術者は私。助手は東府中病院副院長の浅野先生。セルジンガー法による右大腿動脈アプローチにて毛利型カテーテルで骨盤動脈造影を施行。そのままループを形成して右子宮動脈に選択的に挿入、造影。マイクロカテーテルを併用し先端を子宮動脈水平枝から上行枝まで挿入。エンボスフィア500-700μで塞栓開始。腫瘍濃染像が消えかかる時点でエンボスフィア700-900μで塞栓。arcuate arteryが消えかかる時点で抗生剤を添加した少量のゼラチンスポンジで塞栓。子宮動脈上行枝が造影されなくなる程度で塞栓終了。おなじ操作を左子宮動脈に行い最後に骨盤動脈造影で左右の子宮動脈の閉塞を確認して手技を終了しました。エンボスフィアはゆっくりと血流にのって末梢に運ばれるのでend pointを誤らないように確認造影を何回か施行しました。このためどうしても日頃やりなれているゼラチンスポンジでのUAEより透視時間が長くなってしまいます。患者さんへの被曝を低減するために技師さんには線量を落としてもらい、パルスも最低限にしていただきました。エンボスフィアは欧米諸国をはじめとして世界70か国で施用されている塞栓物質ですが私にとっては初めての塞栓物質です。おそらく日本ではほとんどの医師がいまだ使用したことがないはずです。万全を期すために事前に米国でエンボスフィアを使用してUAEを行っている医師と国際電話で使用感をについて話し合い、当日は日本化薬の学術担当者に来院して頂きました。
おかげさまで2例共に透視時間10-20分程度で終了。術後の経過も良好で疼痛コントロールも良好です。ゼラチンスポンジのみのUAEとはどう違うかも今後見極めていきたいと思います。15年前に私はPVAでスタートしました。これでゼラチンスポンジ、エンボスフィアと塞栓物質はすべて経験したことになります。関係者各位に感謝いたします。

子宮筋腫に対する動脈塞栓術(UAE)が保険適応に

厚生労働省の通知により血管塞栓用ビーズとしてエンボスフィア、ヘパスフィアが薬事承認、保険収載されました。

エンボスフィアは欧米にて子宮筋腫に対する動脈塞栓術(UAE)に広く用いられている塞栓物質です。

その使用については、厚生労働省からの依頼により、日本IVR学会が日本医学放射線学会、日本脈管学会、日本肝臓学会、日本肝癌研究会ならびに日本産婦人科学会(エンボスフィアについてのみ)と協議の上、以下の「適正使用に係る体制等の要件」を提出し、この要件を前提として承認がなされました。


よって、その使用にあたっては、これらの要件を満たすことが前提となります。

 
     「エンボスフィアの適正使用に係る体制等の要件」
 
1)術者要件
① 100例以上の塞栓術の経験(学会あるいは所属部門長の承認を要す)     
② 企業の行う教育コースの受講
2)施設要件
① 動静脈奇形に対する治療は、動静脈奇形の治療に十分な経験を有す医師と連携して治療を行なうことが可能な施設で行なうこと。
② 子宮筋腫に対する治療は、子宮筋腫の治療に十分な経験を有す産婦人科医師と連携して治療を行なうことが可能な施設で行なうこと。
3)子宮筋腫に対する実施要件
① 子宮筋腫塞栓術実施後に、重大な有害事象(肺塞栓による心肺停止、Ashermann症候群,子宮内感染,子宮壊死,無月経,不妊など)が起こることがあるので、事前にこれらの危険性について十分に説明、同意を得たうえで産婦人科医と連携して実施すること。
② 実施後の妊娠において、重篤な合併症(流産、切迫早産、子宮破裂、産後大出血、癒着胎盤など)の報告があるため、実施後に妊娠が判明した場合は、ハイリスク妊娠分娩管理が可能な高次医療機関と連携すること。




事実上子宮筋腫の動脈塞栓術は保険適応になりました。

術者は相応の塞栓療法の経験を有すること、施設にも要件があるということは患者さんにとっても不利益を避ける意味で重要です。カテーテルができるからということだけでUAEを行ってはいけないということです。

UAEの保険適応がゴールではなく、これからがスタートなのです。