卵巣動脈塞栓で卵巣機能は低下するのか?

UAEの合併症の一つに卵巣機能低下があげられます。平たく言うと閉経状態になるということです。卵巣は主として卵巣動脈から血流を受けますが子宮動脈と卵巣動脈とは吻合、つまりネットワークがあるため子宮動脈を塞栓することにより卵巣への血流も低下して機能低下をきたす場合がありえるということです。内外の報告によると45歳以上でUAEを受けた場合、10%程度がそのまま閉経になるか閉経が早まるといわれており、44歳以下ならばその可能性は1%以下ということです。

では卵巣動脈を塞栓した場合はどうでしょうか。
実は、頻度は低いのですが卵巣動脈から血流を受ける子宮筋腫があります。
この場合、血流を供給する卵巣動脈を塞栓しなければ筋腫は生き残ってしまうことになります。でもUAEに卵巣動脈塞栓を加える事に関しては議論があります。
なぜならUAEはあくまで子宮動脈塞栓術であって卵巣動脈塞栓術ではないのです。卵巣動脈を塞栓するということは卵巣への栄養源を断つことですから機能が失われてしまう恐れがあります。

問題点は2つあります。

1.子宮動脈塞栓+卵巣動脈塞栓により卵巣機能が(子宮動脈塞栓術よりも)有意に低下するのではないか?

2.子宮動脈塞栓術に卵巣動脈塞栓術が加わるため手技に要する時間が延長し、放射線被曝が増えてしまうのではないか?

葉山ハートセンターでUAEを施行した際に卵巣動脈も塞栓した症例を検討してみました。

14症例ありそのうち1例は2回の卵巣動脈塞栓を行っています。
UAE施行時の平均年齢は43.5歳でした。手技に要した透視時間は平均で16分(6.1-30.6)でした。

結論から言うとUAE後そのまま閉経になった人はいませんでした。
また米国のある大学病院のUAEの平均透視時間が約23分ということから考えると卵巣動脈塞栓を加えても平均16分なら許されると思います。
(もし、許さないという患者さんやお医者さんがいらっしゃいましたら私の元でのUAEはお勧めしません。)
46歳の方でUAE1ヵ月後に一過性にFSHが上昇(それでも22.8)しましたが3ヵ月後には3.9に戻っています。

卵巣動脈を塞栓しても直ちに卵巣機能低下に結びつかない理由の一つに、卵巣は左右にあり、UAE時に左右の卵巣動脈を塞栓することはないからと考えられています。

では左右の卵巣動脈を塞栓した場合はどうでしょうか?
私は1例だけ経験があるのです。
UAE後2年間経過観察をしましたがFSHの上昇はまったく認めず、更年期症状もきたしませんでした。機会があれば研究会か学会に発表しようかと思っています。