外科医 須磨久善

9月5日(日)に外科医 須磨久善というテレビドラマが放送されます。

私は2003年1月から2010年4月まで葉山ハートセンターでUAEを行っていました。
2003年に葉山ハートセンターに入職した当時の病院長が須磨久善先生でした。
婦人科領域のUAEがなぜ心臓専門病院で行えたかというと血管カテーテルという血管からのアプローチで治療するという共通性があったからです。

須磨先生は心臓外科医で私は放射線科医ですから直接指導してもらったことはありません。でも同じ病院で日頃顔を合わせるわけですから仕事内容はお互いに伝わってきました。直接指導を受けたことはありませんから、師匠とは呼べませんが、治療後は患者さんの笑顔がなくてはならないということを教えてくださった点からは恩師と呼べます。

忘れられないのは葉山ハートセンター入職早々にある会議での須磨先生の発言です。

「鳴り物入りでやってくる医師は数多く見た。実際に2-3ヶ月すれば本物かどうかはすぐわかる。」

当時私はUAEの症例では日本で有数の症例数を持っていましたから、いわゆる「鳴り物」だったのかもしれません。早い話、へたくそだったらすぐにお払い箱になるという意味でした。でも今までやってきたとおりにやればなんとかなると信じていました。

葉山ハートセンターで働き始めてしばらくたってのことです。

あるおすし屋さんでカウンターにすわっていました。雑談しているうちにおすし屋のご主人が「先生。どこの病院?」と聞いてきました。私は「葉山のハートセンター」と答えたら、たまたまそばに座っていたお客さんが「先生。葉山なの?」といい、おもむろに胸をはだけ、

「これ、須磨先生に手術してもらったんだ!」

と言ったのです。胸には真一文字に手術の痕がありました。

さて当初はUAE症例だけでしたが、他の血管内治療もできるということがまわりの先生方にわかっていただけたせいか、多くはありませんが、腸骨動脈等、末梢血管の形成術にも参加させていただくことができました。またカテーテルアブレーションという不整脈治療も見学させていただきました。その斬新な画期的治療には目を見張ったものです。

UAE症例は順調に増え、7年余りで840症例ほどをさせていただくことができました。

須磨先生はさらなる発展を求めて東京にある病院に行かれましたが、今でも時折患者さんを紹介してくださります。紹介状をみるときはうれしさと同時に身が引き締まります。なぜなら患者さんを満足させると同時に紹介してくださった先生も納得させなくてはならないからです。

もちろん紹介状のあるなしで治療の質が変わることはありません。

テレビドラマ外科医-須磨久善を楽しみにしています。