子宮腺筋症に対するUAEの治療効果

昨年の日本IVR学会総会で発表した内容をもう一度見直してみました。最近は子宮腺筋症の患者さんが増えています。子宮腺筋症のUAEでは病巣が完全に梗塞になった場合はきわめて良好な治療効果が得られます。手技そのものは30分程度で終了し、24-48時間後には退院可能なまで回復が早いというのはUAEの大きな利点です。
腺筋症に対するUAEの問題点は完全に梗塞になる場合とそうでない場合がほぼはっきりと分かれてしまうことです。どちらになるかは術前に判断できません。もし術前に判断ができれば患者さんに『あなたの場合はいい適応です。』と自信を持って説明ができますし、適応となる患者さんを選択することができます。どういった腺筋症は完全梗塞になりにくいかが判るにはどうしても症例の蓄積が必要で検討が必要なのです。



     【子宮腺筋症に対するポンピング法ゼラチンスポンジ使用によるUAE】
               (第39回日本IVR学会総会にて口演)

【目的】ポンピング法にて作成したゼラチンスポンジを塞栓物質とした子宮腺筋症に対するUAEの治療効果を検討。


【方法】2003年から2009年まで当院にてUAEが施行された子宮腺筋症82例のうち筋腫合併を除く37症例を対象。塞栓物質は充分にポンピングしたgelformのみ。塞栓の程度はDSA上子宮動脈水平枝が描出されなくなるまでとした。UAE施行時の年齢は29-52歳(平均42.9歳)、経過観察期間1-71ヶ月(平均20.8ヶ月)。UAE前後のMRI画像、臨床症状、FSH、CA125を検討。

【成績】両側子宮動脈塞栓36例、両側および右卵巣動脈付加塞栓1例であった。全例でUAE後48時間以内の退院が可能であった。UAE後1ヶ月の造影MRIにて腺筋症病変の梗塞領域を検討したところ、完全梗塞23例(62.2%)、50-99%梗塞9例(24.3%)、50%未満梗塞5例(13.5%)であった。全例でUAE後から月経痛、過多月経等の臨床症状は改善されたが経過観察中5例で症状再燃が認められ、症状再燃までの期間は3-36ヶ月(平均15.6ヶ月)であった。再治療が4例(ATH:1例、GnRHa:3例)に施行された。UAE後の無月経は6例(一過性:2例、閉経:3例、子宮性:1例)でUAE施行時年齢はいずれも45歳以上であった。CA125の低下は梗塞領域とよく相関した。


【結論】ポンピング法ゼラチンスポンジによるUAEは子宮腺筋症に対して有用で安全な方法と思われた。





グラフから子宮腺筋症単独の場合でも3年で70-80%、5年で70%弱の患者さんが症状コントロールされていると言うことになります。逆に言えば3年以内に20-30%の患者さんはコントロール不良になるということです。尚、筋腫を合併した腺筋症でも充分治療効果があることは先の日本医学放射線学会総会で口演しました。