子宮腺筋症に対するUAEの治療効果 -海外の状況-

Journal of Vascular and Interventional Radiology


Volume 22, Issue 7 , Pages 901-909, July 2011.
 
より。
 
欧米においてもUAEの子宮腺筋症に対する治療効果が出てきているようです。米国のIVR学会雑誌に2011年7月に発表された論文によると15の報告、計511名の腺筋症に対する治療効果は、平均2年3ヶ月の経過観察で75.7%で症状改善が認められ、感染等の合併症は認められなかったのことです。
 
子宮腺筋症を根治できるのは子宮全摘術だけですが(それ以外の方法は無効の場合や再発の可能性があります。)閉経になれば腺筋症による症状もなくなるということを考えれば、たとえ3年後、5年後に再発したとしてもそれだけ年月が経っているわけですし、再UAEの可能性やジェノゲストや低用量ピル、GnRHa等のホルモン療法を組み合わせることによって子宮全摘をせずにコントロールし、閉経まで逃げ込むことができうるわけです。
 
UAEは子宮腺筋症に対する有効な治療法になりえると確信しております。

まもなく2000症例

府中恵仁会病院に赴任させていただき1年が過ぎました。間もなくUAEは100症例、1998年から通算すると約2000症例になります。恵仁会病院でのUAEは技術的成功率:両側の子宮動脈にカテーテルが挿入でき塞栓する:は片側の子宮動脈が欠損していた1例を除き全例に成功しました。片側
の子宮動脈が欠損する例は100~200例に1例ほどあります。この症例のみ片側塞栓でした。

脳血管や心臓血管のIVRはそれぞれ脳外科、循環器科によって行われています。脳動脈瘤のコイル塞栓術、脳動静脈奇形の塞栓術、頚動脈狭窄症に対するステント治療は脳外科、冠状動脈ステント治療、下肢ASO、腎動脈狭窄、透析シャントPTAなどは循環器科が行っています。

私は脳血管、心臓血管以外のIVRは大抵こなしますので、府中恵仁会病院にはIVRセンターがあるといってもいいほどです。

脳血管や心臓血管のIVRでのディバイスの発達には目覚しいものがあり時折見学させていただき
自分の技術向上に役立たせてもらっています。


UAE後の妊娠の可能性

SIR: Pregnancy Possible After Fibroid Embolization By Kristina Fiore, Staff Writer, MedPage Today

Published: March 15, 2011

 Reviewed by Zalman S. Agus, MD; Emeritus Professor

University of Pennsylvania School of Medicine and Dorothy Caputo, MA, RN, BC-ADM, CDE, Nurse Planner
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Explain that a small, single-center study found women who underwent uterine fibroid embolization (UFE) had a subsequent fertility rate comparable to that of surgical removal of fibroids.


Note that this study was published as an abstract and presented at a conference. These data and conclusions should be considered preliminary until published in a peer-reviewed journal.

TAMPA -- Fertility rates after uterine fibroid embolization (UFE) are comparable to those following myomectomy, researchers said here.

In a small, single-center study, women who had the procedure had a subsequent fertility rate of 58.1%, Joao Martins Pisco, MD, of St. Louis Hospital in Lisbon, Portugal, and colleagues reported at the Society of Interventional Radiology (SIR) meeting here.

That compares with a rate of about 57% for surgical removal of fibroids, Pisco said.

"UFE should not be contraindicated in patients who want to conceive," he said. "They should be able to choose between surgical options and UFE."

Pisco referred to 2004 guidelines from the American College of Obstetricians and Gynecologists, which advise that UFE should not be used if the patient wants to get pregnant. Instead, myomectomy, or full surgical removal of fibroids, is considered the gold standard in women who wish to conceive.

But John Lipman, MD, of Emory University in Atlanta and a spokesperson for SIR who was not involved in the study, noted that patients have about a 50% reduced fertility after their first myomectomy, which declines even more after subsequent procedures.

So, to evaluate fertility rates after UFE, the researchers performed the procedure on 743 patients, 74 of whom wanted to preserve their ability to become pregnant.

None of those women could successfully conceive at the time of UFE, and their mean age was 36.2 years.

Uterine arteries were embolized with either polyvinyl alcohol particles (26 patients) or embozene microspheres (three patients).

The procedure was x-ray-guided and done under local anesthesia, but Pisco noted that "if [the] patient wants to get pregnant, we do the embolization in a different way, . . . using a lower x-ray time, and we embolize only vessels giving blood to fibroids."

Among those 74 patients, 43 became pregnant after the procedure, for a total fertility rate of 58.1%, compared with a rate of 57% for patients with myomectomy.

Their mean time to conception was 10.8 months.

Pisco reported a total of 36 finished pregnancies, with 30 successful live births.

The remaining pregnancies had the following results:

13.8% had spontaneous miscarriage

10% had preterm delivery

13.3% had low birth weight



There were no significant neonatal problems, Pisco said.

Seven other women have ongoing pregnancies with normal evolution and are waiting for term.

Lipman, who wasn't involved in the study, called the pregnancies "remarkable."

"We've been told that you can't do UFE on patients who want to get pregnant," he said.

He cautioned, however, that patient selection is important, especially the woman's age.

"You have to look at each patient. You have to assess if she's symptomatic, and second, you have to ask, what is her chance of truly getting pregnant?" he said.

Pisco said larger randomized, controlled trials should be done comparing UFE and myomectomy.

The researchers reported no conflicts of interest.

妊娠・出産希望者に対するUAEは 

 1)低線量で行う。
 2)マイルドな塞栓にとどめる。

ということです。


UAEは塞栓物質で行うものではなく、“腕”と“心”で行うものなのです。

子宮腺筋症に対するUAEの治療効果

昨年の日本IVR学会総会で発表した内容をもう一度見直してみました。最近は子宮腺筋症の患者さんが増えています。子宮腺筋症のUAEでは病巣が完全に梗塞になった場合はきわめて良好な治療効果が得られます。手技そのものは30分程度で終了し、24-48時間後には退院可能なまで回復が早いというのはUAEの大きな利点です。
腺筋症に対するUAEの問題点は完全に梗塞になる場合とそうでない場合がほぼはっきりと分かれてしまうことです。どちらになるかは術前に判断できません。もし術前に判断ができれば患者さんに『あなたの場合はいい適応です。』と自信を持って説明ができますし、適応となる患者さんを選択することができます。どういった腺筋症は完全梗塞になりにくいかが判るにはどうしても症例の蓄積が必要で検討が必要なのです。



     【子宮腺筋症に対するポンピング法ゼラチンスポンジ使用によるUAE】
               (第39回日本IVR学会総会にて口演)

【目的】ポンピング法にて作成したゼラチンスポンジを塞栓物質とした子宮腺筋症に対するUAEの治療効果を検討。


【方法】2003年から2009年まで当院にてUAEが施行された子宮腺筋症82例のうち筋腫合併を除く37症例を対象。塞栓物質は充分にポンピングしたgelformのみ。塞栓の程度はDSA上子宮動脈水平枝が描出されなくなるまでとした。UAE施行時の年齢は29-52歳(平均42.9歳)、経過観察期間1-71ヶ月(平均20.8ヶ月)。UAE前後のMRI画像、臨床症状、FSH、CA125を検討。

【成績】両側子宮動脈塞栓36例、両側および右卵巣動脈付加塞栓1例であった。全例でUAE後48時間以内の退院が可能であった。UAE後1ヶ月の造影MRIにて腺筋症病変の梗塞領域を検討したところ、完全梗塞23例(62.2%)、50-99%梗塞9例(24.3%)、50%未満梗塞5例(13.5%)であった。全例でUAE後から月経痛、過多月経等の臨床症状は改善されたが経過観察中5例で症状再燃が認められ、症状再燃までの期間は3-36ヶ月(平均15.6ヶ月)であった。再治療が4例(ATH:1例、GnRHa:3例)に施行された。UAE後の無月経は6例(一過性:2例、閉経:3例、子宮性:1例)でUAE施行時年齢はいずれも45歳以上であった。CA125の低下は梗塞領域とよく相関した。


【結論】ポンピング法ゼラチンスポンジによるUAEは子宮腺筋症に対して有用で安全な方法と思われた。





グラフから子宮腺筋症単独の場合でも3年で70-80%、5年で70%弱の患者さんが症状コントロールされていると言うことになります。逆に言えば3年以内に20-30%の患者さんはコントロール不良になるということです。尚、筋腫を合併した腺筋症でも充分治療効果があることは先の日本医学放射線学会総会で口演しました。


名手に学ぶ

UAEは技術的には---カテーテルを左右の子宮動脈に挿入し、そこから塞栓物質を注入する---と至極シンプルな手技です。

違った道の名手の言葉です。


------若いヴィルトゥオーソは、練習している曲にあまりにも早く飽きてしまいがちである。彼らは薄れ行く興味を育て直すことはせず、その曲を弾くたびに、なにかを付け加えたり、楽譜になにか特別の意味を付与しようとすることには関心を示さない、、、常に完璧性を求め、音楽的にも、テクニックの点からもその曲の表現に工夫を加えていくべきである。またたえずフィンガリングの改善を試みていくべきである。大演奏家の多くが、たくさんのレパートリーをもっているわけではないが、彼らは何年にもわたってそのレパートリーについて考え、練習を続けているのである。メンデルスゾーンの協奏曲のように何度も演奏しているものでさえ、演奏するたびに、よりよい演奏をし、さらに優れた仕上げを試み、細部を磨き上げなければならない。----ジノ・フランチェスカッティ------

これはUAEに限らず、あらゆる手技、手術に通じるところがあります。メンデルスゾーンの協奏曲をUAEに例えれば手技自体もそうですが、術前の適応から術中術後の管理等すべてを含めて細部まで磨き上げねばなりません。

UAE後の妊娠

今年になってから2名のUAE後の出産の報告を受けました。今回新たにUAE後の妊娠を確認しました。1年半ほど前にUAEを行った腺筋症患者さんでした。1年半前なので私が葉山ハートセンターに在職していた時にUAEを行ったのです。患者さんを紹介してくれたのは葉山ハートセンターの院長をしておられた心臓外科医の須磨先生でした。
自然妊娠でした。腺筋症に対するUAE後の妊娠は体外受精で妊娠した1症例のみ経験していたので今回の自然妊娠はうれしさひとしおです。妊娠した場合は報告するようにと言っていましたので外来受診していただき超音波で胎児を確認、心拍も確認しました。
私はうれしさのあまり胎児ばっかりチェックしておりうっかり腺筋症を確認していませんでした。
検査後胎児は問題なく発育していることをお話したあともう一度横になっていただき超音波で腺筋症をチェックしました。腺筋症病変部は残存しているものの以前と比べて縮小していました。さらにカラードップラーで子宮動脈の血流も確認しました。塞栓物質であるゼラチンスポンジは吸収性であるため子宮動脈本幹は再開通する傾向が高いのです。ただし筋腫を養っている腫瘍動脈は再開通しにくい、おそらく腺筋症の場合も同じでしょう。
UAE後の出産を受け入れてくれる施設に紹介状を書きました。
朗報を期待しています。


追記:この患者様はこの後無事に出産されました。帝王切開でしたが癒着胎盤も無く2552gの元気な男の子でした。


子宮腺筋症の核出術

腺筋症に対する核出術を検索すると、2度の核出術後に体外受精で妊娠するも、流産、癒着胎盤と多量出血のためUAE(これは止血目的のUAEです。)を行うも出血と感染兆候の増悪、出血コントロール不良のために開腹子宮全摘となった症例が報告されています。

子宮腺筋症核出術2回施行後の妊娠で中期流産となり,癒着胎盤のため子宮摘出に至った一例
http://kanto-sanfujinka.ehost.jp/journal/lfx-journal_detail-id-19198.htm
【背景・目的】子宮腺筋症は35歳以上の女性に多く認められ,結婚年齢の上昇により妊娠に合併する例が増加している.近年,子宮腺筋症に対する保存的治療として手術的に腺筋症病変を切除する方法が報告されているが,手術後の妊娠予後については未だ不明の部分が多い.今回我々は,子宮腺筋症核出術を2回施行後,体外授精で妊娠成立したが,妊娠中期に流産となり,さらに癒着胎盤のため子宮摘出に至った症例を経験したため報告する.

【症例】症例は39歳,2経妊0経産.子宮腺筋症による月経痛,過多月経ひどく33歳時に子宮腺筋症核出術を施行した.その後2回初期流産.35歳時に再発し再度核出術を施行した.その後,両側卵管閉塞のため体外授精を行い妊娠成立し当院初診となった.妊娠16週,腹緊の自覚とともに頸管長の短縮を認めたため,入院とし塩酸リトドリン持続点滴を開始した.18週5日,腹部症状の増悪とともに胎胞脱出を認め,19週1日に死産となった.死産後胎盤が娩出せず,出血量が1500 mLを越えたため輸血開始し,止血目的に子宮動脈塞栓術(UAE)を施行した.UAE施行後,胎盤の自然排出を期待し待機したが,UAE後10日目,出血と感染兆候の増悪を認めたため子宮内容除去術を施行した.しかし胎盤摘出後も出血のコントロールつかなかったため,開腹し子宮全摘出術施行した.子宮・胎盤の病理学的検査にて,癒着胎盤の診断であり,子宮筋層には高度な子宮腺筋症の残存を認めた.

【考察】子宮腺筋症核出術は子宮温存目的に近年施行されるようになってきたが,妊娠予後については不明な部分も多く,今回の症例のように重篤な妊娠合併症を来す可能性があることを念頭に置く必要があると考えられた.



もちろん腺筋症核出術後に無事に出産している例もあると思いますが、こういったこともあるのだと勉強になります。

つまり、外来で腺筋症で挙児希望の場合は、

『妊娠・出産を望んでいるのなら第一選択はUAEよりも核出術だと思うが、その核出術にもリスクがある。実際に核出術を手がけている先生によく話を聞いてください。』

という必要があるということです。

私自身は血管カテーテルによる診断と治療を専門としているので子宮筋腫や腺筋症を手術することはありません。(大昔に手術の助手をした事はありますが、、、。)
ですから自分自身で手術とUAEとの比較を体感できないのです。手術がどのくらい大変なものかということを術者として体感できない。手術した患者さんを自分で責任を持って管理し、その患者さんがたどる経過を身をもって体感できないのです。
(UAEに関してはそれができるのですが、、。)

ですから手術もする、UAEも行うという医師がいれば、それを体感できて、UAEと手術のどちらがいいとか、こういった場合は手術、こういった場合はUAEのほうがいいとより判断できると思います。

手術もするUAEもするという医師はおそらくほとんどいないと思います。

私が知っている限りでは手術を行う産婦人科医でありながら200症例以上のUAEを手がけた医師が一人いるだけです。