UAEの安全性

表を見てわかるようにUAEは極めて安全性の高い治療法です。pumping法によるゼルフォームを塞栓物質とした成績です。合併症は表では7例になっていますが6例の間違いです。236例中6例なので2.5%ということになります。

現在はエンボスフィアを塞栓物質としてすでに250例以上を行いましたが更に合併症は少なくなっています。


大阪にてUAE施行



大阪にある病院に招聘されてUAEを行ってきました。 前もってMRIはCDで送っていただき適応を決定しており、UAE手技がどうなるかはイメージしていました。エンボスフィアを塞栓物質としたUAEもここ1年で230例を越えていわゆる“慣れて”きた頃になります。自動車の運転もそうですが、“慣れて”きたころが危なく、事故を起こします。 また新幹線で往復するわけですが、大阪観光ではなく施術です。行きの新幹線では車中でコーヒーだけにして早めに大阪入り、病院のそばで昼食を取り、予定手術時間より30分以上早く病院入りしました。自分の病院であれば血管造影装置からカテーテル、ガイドワイヤー、シリンジ、シャーレ、薬剤等に至るまで使い慣れたものがあり、何が起きても即座に使用できる状況下ですが、他院となるとそうは行きません。サッカーで言えば『away』での戦いと言うことに成ります。 UAEの進み具合を車中でイメージしているうちに名古屋、京都とあっというまに大阪着です。 早めに血管造影室入りをさせてもらい、血管造影装置からカテーテル、手術用手袋!に至るまでできるだけ詳細にチェックさせてもらいました。手術台の高さ調整やIIの高さ、角度などの調整は機種によって扱いが微妙に違ってきます。フットスイッチも微妙に違います。施術をイメージしながらできるだけチェックする、競技スキーで言えばインスペクションに当たりオーケストラではゲネプロに当たります。 技師さんには透視条件を7.5パルスに設定してもらい、手技を無事終了させることができました。モニターでの見え方が若干いつもの装置とは違ったため、確認造影を多めに行いましたが、1時間程度で手技は終了。筋腫がやや大きかったためエンボスフィアは平均の1.8倍ほど使用しましたが造影剤量、透視時間も想定範囲でした。 翌日には主治医の先生に電話をして患者さんの常態が落ち着いていることを確認しました。 皆様お疲れ様でした。




子宮筋腫に対するUAE

子宮動脈塞栓術(UAE)でもっとも大切なのは適応です。UAEの手技は左右の子宮動脈にカテーテルを挿入し、塞栓物質を流し込む。極めてシンプルです。たったこれだけのことです。ほとんどの女性が右と左にそれぞれ1本の子宮動脈があります。私は外来で患者さんに『UAEそのものはどうって事はありませんよ。大切なのはUAEをして患者さんがよかったと思うこと。つまり適応なんです。』とお話しています。ではどういった子宮筋腫が適応外なのか。 1.挙児希望で核出術が可能、もしくは核出術が妊娠出産に有利と思われる例 2.症状の乏しい子宮筋腫 3.大きすぎる筋腫(おおよそへその高さぐらいまでなら適応内) 4.10cmを越える粘膜下筋腫もしくは筋層内筋腫で粘膜面に近いもの(未産婦の場合は8cm) 5.LDHが高値で変性が著明な腫瘍 6.手術適応の付属器腫瘤がある などです。 上記にしたがって診察をした結果、2014年度は約320名の初診患者さんに対して196名にUAEを行いました。つまり60%がUAE適応と言うことになります。 初診患者さんはほとんどの方が他院で子宮筋腫と診断され、手術を勧められていました。この場合の手術とは全摘ですので子宮全摘と言われた患者さんの6割がUAE適応になる。裏を返せば4割は適応外ということになります。

エンボスフィアによる子宮動脈塞栓術の初期成績

2014年にエンボスフィアを塞栓物質として実施された子宮動脈塞栓術162例のうち術後造影MRIを施行し塞栓効果を判定された128例を対象 108症例は子宮筋腫、20症例は腺筋症合併もしくは腺筋症のみ UAE162例の手技的成功率 100% (子宮動脈の欠損や、選択的カテーテル挿入は可能であったが造影所見により塞栓することによるリスクがベネフィットを上回ると判断し塞栓物質を注入しなかった症例は除く。) 手技に要した透視時間の平均15.7分 1症例に使用したエンボスフィアの平均 500-700μm3.6V 700-900μm0.5V UAE1か月後の造影MRIによる病変部梗塞の評価 完全梗塞率85.2%   筋腫分娩3.9%   感染1例(感染筋腫の経膣的切除で完治) 異所性塞栓によると思われる臀筋障害1例(軽度の疼痛と違和感のみであり1ヶ月以内に症状消失) 不完全梗塞筋腫の増大による再治療 1例(腹腔鏡下子宮全摘術)

保険適応後の子宮動脈塞栓術

エンボスフィアが子宮筋腫に対する動脈塞栓術の塞栓物質として保険適応となる以前はゼラチンスポンジを塞栓物質として使用していました。もっともエンボスフィアは高分子ポリマーとゼラチンから成っているのでゼラチンを使用していることには違いはありません。ゼラチンスポンジを塞栓物質とした場合、カテーテルにより多少血流が悪くなったり、多少カテーテルがウエッジした状態でもゼラチンスポンジは注入することができました。なによりそれでも非常に良好な成績を出していました。一方エンボスフィアの場合はそうはいかないことがわかりました。エンボスフィアは血流に乗ってゆっくりと末梢に進むので血流が停滞していると末梢に移動しないばかりでなく容易にオーバーフローして異所性塞栓を起こしてしまいます。つまり合併症の原因となってしまいます。ゼラチンスポンジを使用していた頃は大多数の症例で4フレンチサイズ(径1.3mm)の毛利型カテーテル1本でUAEを行っていました。子宮動脈が細い時やカテーテルをもっと奥まで挿入したいときのみ時々マイクロカテーテルを併用していました。平均透視時間は8-9分で、早いときは穿刺からカテーテル抜去まで10分以内ということもありました。欧米からの論文によるとUAEの平均透視時間は23分程度であったので「ずいぶんと遅いもんだ、日本人の方が手先が器用なんだろう。」程度に思っていました。 ところが自分がエンボスフィアを使用するようになってこの考えは一転しました。まずフリーフローを保ったままでカテーテルを十分に挿入しなくてはなりません。マイクロカテーテルの併用はほぼ必須です。その上塞栓物質であるエンボスフィアはゆっくりと流れていくので透視時間は延長します。最近は透視時間が10分を切ることもありますが、14-5分かかることはざらです。さらに欧米の透視時間のデータも以前より早くなってきており14-5分ということなのでなんら差はないことになります。よく日本人は手先が器用といいますが、ピアノやヴァイオリンの演奏を見聞きしていると、人種に差がないことがことがわかります。サッカーの足技もそうです。(この場合は手ではないですが)もっとも楽器の演奏もカテーテルも手先の器用さだけでやっているわけではありません。エンボスフィアを使用するようになってからUAEの手技の工程を一つずつ確認するようになりました。特に子宮動脈に選択的に挿入する時がそうです。スパスムを起こさず、フリーフローを保ち、ウエッジしない。そのために、4フレンチサイズの親カテを子宮動脈に入れるのか入れないのか、マイクロカテーテルを先行させるのか、マイクロガイドワイヤーを先行させるのか、マイクロカテーテルの形状はどんなのがいいのか、また挿入困難時の子宮動脈の起始部の分岐角度や形状はどうなっているのかなど細かな点まで確認するようになりました。UAEを開始した当初(1998年頃)は血管撮影の所見をスケッチしていました。今はスケッチすることはありませんがUAEを終えたらその日のうちにモニターで所見を見直し、レポートを書いています。手術で言えばオペ記事を書くのと一緒です。挿入困難な場合はこれこれのため挿入困難、○○カテーテルに変えて挿入可能となり、、のようにあとから見た場合にもすぐわかるようにしています。そうすると挿入困難な場合はどの程度あるのか、どういった場合が難しいのかがおのずとわかるようになってきます。やはり経験症例は多くなくてはいけない所以です。 今年は11月半ばですでに142例を施行。今後予定されているだけで19症例、初診待ちも30人以上です。今年は160例あまりを経験することとなるでしょう。来年は200例を行うつもりでやって行きたいと思っています。

UAE症例数はまもなく2400例に

UAEが保険適用となり患者さんにとっても選択しやすくなりました。本年8月は26例、9月10例、10月23例を行い(9月は夏休みをいただきましたので)ました。 UAE後1週間目は原則としてチェックしますので1週間休む場合その週の前の週はUAEはしません。 ついこの間、UAE総症例数が2340例になったのですが3ヶ月で59例を行い、11月は予定されているだけで17例、初診待ちが35人以上という状態です。2014年は150症例以上のUAEを行うことになるでしょう。まもなく2400症例ということになります。 エンボスフィアでのUAE症例も130例以上となり少しはモノが言える様になりました。ちょうどこのタイミングでラジオ日本の医療番組に出演することとなりました。

UAEのメリット

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEも116例となり、来週は6例、再来週は5例が予定されており10月中に127例に達する見込みです。手技に要する透視時間も10分程度と短くなってきました。 UAEのメリット・デメリットを考慮するとき、放射線被曝がデメリットしてあげられます。手技時間の短縮が放射線被曝の減少に直結するので短時間で手技を終えるということは重要なのですが、パルス透視を使用して放射線を出しっぱなしにしないことも被曝低減に一役買います。今までは7.5F/sで手技を行っていましたが、モニターに映し出される画像が十分すぎるほどよく見えるため5F/sで手技を行ったところ差し障りがありませんでした。そこで3F/sまで落としてみました。さすがに秒間3パルスではカテーテル、ガイドワイヤー操作に困難を感じたのですが、塞栓物質の注入中は問題がありませんでした。大幅に被曝低減が可能になりました。デメリットの一つを極力最小にすることができたのです。被曝が少なくなるということは患者さんだけでなく術者、スタッフ、血管造影室にいるすべての人への被曝低減につながります。それからUAEのデメリットの一つであった「保険がきかず費用が高い」は保険適用となったため「費用が安い」となりメリットになりました。 開腹子宮全摘術、核出術、腹腔鏡下手術のいずれよりも費用が安いのです。