エンボスフィアによる子宮動脈塞栓術の初期成績

2014年にエンボスフィアを塞栓物質として実施された子宮動脈塞栓術162例のうち術後造影MRIを施行し塞栓効果を判定された128例を対象 108症例は子宮筋腫、20症例は腺筋症合併もしくは腺筋症のみ UAE162例の手技的成功率 100% (子宮動脈の欠損や、選択的カテーテル挿入は可能であったが造影所見により塞栓することによるリスクがベネフィットを上回ると判断し塞栓物質を注入しなかった症例は除く。) 手技に要した透視時間の平均15.7分 1症例に使用したエンボスフィアの平均 500-700μm3.6V 700-900μm0.5V UAE1か月後の造影MRIによる病変部梗塞の評価 完全梗塞率85.2%   筋腫分娩3.9%   感染1例(感染筋腫の経膣的切除で完治) 異所性塞栓によると思われる臀筋障害1例(軽度の疼痛と違和感のみであり1ヶ月以内に症状消失) 不完全梗塞筋腫の増大による再治療 1例(腹腔鏡下子宮全摘術)

保険適応後の子宮動脈塞栓術

エンボスフィアが子宮筋腫に対する動脈塞栓術の塞栓物質として保険適応となる以前はゼラチンスポンジを塞栓物質として使用していました。もっともエンボスフィアは高分子ポリマーとゼラチンから成っているのでゼラチンを使用していることには違いはありません。ゼラチンスポンジを塞栓物質とした場合、カテーテルにより多少血流が悪くなったり、多少カテーテルがウエッジした状態でもゼラチンスポンジは注入することができました。なによりそれでも非常に良好な成績を出していました。一方エンボスフィアの場合はそうはいかないことがわかりました。エンボスフィアは血流に乗ってゆっくりと末梢に進むので血流が停滞していると末梢に移動しないばかりでなく容易にオーバーフローして異所性塞栓を起こしてしまいます。つまり合併症の原因となってしまいます。ゼラチンスポンジを使用していた頃は大多数の症例で4フレンチサイズ(径1.3mm)の毛利型カテーテル1本でUAEを行っていました。子宮動脈が細い時やカテーテルをもっと奥まで挿入したいときのみ時々マイクロカテーテルを併用していました。平均透視時間は8-9分で、早いときは穿刺からカテーテル抜去まで10分以内ということもありました。欧米からの論文によるとUAEの平均透視時間は23分程度であったので「ずいぶんと遅いもんだ、日本人の方が手先が器用なんだろう。」程度に思っていました。 ところが自分がエンボスフィアを使用するようになってこの考えは一転しました。まずフリーフローを保ったままでカテーテルを十分に挿入しなくてはなりません。マイクロカテーテルの併用はほぼ必須です。その上塞栓物質であるエンボスフィアはゆっくりと流れていくので透視時間は延長します。最近は透視時間が10分を切ることもありますが、14-5分かかることはざらです。さらに欧米の透視時間のデータも以前より早くなってきており14-5分ということなのでなんら差はないことになります。よく日本人は手先が器用といいますが、ピアノやヴァイオリンの演奏を見聞きしていると、人種に差がないことがことがわかります。サッカーの足技もそうです。(この場合は手ではないですが)もっとも楽器の演奏もカテーテルも手先の器用さだけでやっているわけではありません。エンボスフィアを使用するようになってからUAEの手技の工程を一つずつ確認するようになりました。特に子宮動脈に選択的に挿入する時がそうです。スパスムを起こさず、フリーフローを保ち、ウエッジしない。そのために、4フレンチサイズの親カテを子宮動脈に入れるのか入れないのか、マイクロカテーテルを先行させるのか、マイクロガイドワイヤーを先行させるのか、マイクロカテーテルの形状はどんなのがいいのか、また挿入困難時の子宮動脈の起始部の分岐角度や形状はどうなっているのかなど細かな点まで確認するようになりました。UAEを開始した当初(1998年頃)は血管撮影の所見をスケッチしていました。今はスケッチすることはありませんがUAEを終えたらその日のうちにモニターで所見を見直し、レポートを書いています。手術で言えばオペ記事を書くのと一緒です。挿入困難な場合はこれこれのため挿入困難、○○カテーテルに変えて挿入可能となり、、のようにあとから見た場合にもすぐわかるようにしています。そうすると挿入困難な場合はどの程度あるのか、どういった場合が難しいのかがおのずとわかるようになってきます。やはり経験症例は多くなくてはいけない所以です。 今年は11月半ばですでに142例を施行。今後予定されているだけで19症例、初診待ちも30人以上です。今年は160例あまりを経験することとなるでしょう。来年は200例を行うつもりでやって行きたいと思っています。

UAE症例数はまもなく2400例に

UAEが保険適用となり患者さんにとっても選択しやすくなりました。本年8月は26例、9月10例、10月23例を行い(9月は夏休みをいただきましたので)ました。 UAE後1週間目は原則としてチェックしますので1週間休む場合その週の前の週はUAEはしません。 ついこの間、UAE総症例数が2340例になったのですが3ヶ月で59例を行い、11月は予定されているだけで17例、初診待ちが35人以上という状態です。2014年は150症例以上のUAEを行うことになるでしょう。まもなく2400症例ということになります。 エンボスフィアでのUAE症例も130例以上となり少しはモノが言える様になりました。ちょうどこのタイミングでラジオ日本の医療番組に出演することとなりました。

UAEのメリット

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEも116例となり、来週は6例、再来週は5例が予定されており10月中に127例に達する見込みです。手技に要する透視時間も10分程度と短くなってきました。 UAEのメリット・デメリットを考慮するとき、放射線被曝がデメリットしてあげられます。手技時間の短縮が放射線被曝の減少に直結するので短時間で手技を終えるということは重要なのですが、パルス透視を使用して放射線を出しっぱなしにしないことも被曝低減に一役買います。今までは7.5F/sで手技を行っていましたが、モニターに映し出される画像が十分すぎるほどよく見えるため5F/sで手技を行ったところ差し障りがありませんでした。そこで3F/sまで落としてみました。さすがに秒間3パルスではカテーテル、ガイドワイヤー操作に困難を感じたのですが、塞栓物質の注入中は問題がありませんでした。大幅に被曝低減が可能になりました。デメリットの一つを極力最小にすることができたのです。被曝が少なくなるということは患者さんだけでなく術者、スタッフ、血管造影室にいるすべての人への被曝低減につながります。それからUAEのデメリットの一つであった「保険がきかず費用が高い」は保険適用となったため「費用が安い」となりメリットになりました。 開腹子宮全摘術、核出術、腹腔鏡下手術のいずれよりも費用が安いのです。

痛みが少ないエンボスフィア

エンボスフィアを塞栓物質としたUAEは100症例を越え、UAE総症例数は2340例となりました。2014年は9月で100例を突破したのでこのままのペースでいけば本年は130~140例になると見込まれます。例年は100例どまりであったのですがこの症例の伸びはUAEに使用される塞栓物質であるエンボスフィアが保険適応となったことが大きな要因であることは言うまでもありません。ところでエンボスフィアは500-700μのサイズを使用します。筋腫周囲の血管網はperifibroid plexusと呼ばれ平均650μであることが知られています。一方utero-ovarian anastomosis,cervico-vaginal branchの血管径は500μ以下ですので500-700μのサイズを使用すれば理論的には筋腫だけを塞栓することができます。エンボスフィアでのUAEの痛みが少ないのはこのためです。エンボスフィアは時間とともに血流に流されて末梢に移動しますがこの血流が生理的なものでなくカテーテルにより妨げられていればカテーテルを抜いた後、末梢に移動し塞栓不足になります。また時間とともに末梢に移動するのでエンドポイントを決めにくい場合があります。これらは経験はもとより手技、血管造影像、術前術後のMRI画像をよく検討し、結果をフィードバックすることにより解決できます。本年2月にエンボスフィアが保険収載され約半年程度で100症例を経験することができました。この程度経験すると指先に感覚がうずくようになります。エンボスフィアは私にとってもはや未知の塞栓物質ではなくなりました。

UAE症例は2300例に

エンボスフィアでのUAEも60症例となりUAE総症例数は2300例に達したようです。先週は第9回日本IVR学会関東地方会に出席してきました。学会での最大の収穫は演題ではなく企業が展示していた球状塞栓物質の模型でした。実際に使用されるマイクロカテーテルから球状塞栓物質がどのように出てどのように流れるのかを直視できます。もちろん人体の血管とはいささか勝手が違いますが、塞栓方法を体得するのに一役買います。この模型には黒山の人だかり、といいたいところですが私がしばらく独占してしまいました。

第43回日本IVR学会総会(2)

学会2日目は特別企画で私が聴講したかったDr.Piscoの講演がありました。Dr.Piscoは多数のUAE症例だけではなく、前立腺肥大症に対する動脈塞栓術(PAE)も700例以上の経験をお持ちのパイオニアです。特別企画ではUAEではなくPAEについて講演されましたが、自分のセッションが終わると会場を出て行きました。前方席に座っていた私も後を追うようにして、質問しました。 質問内容 1.UAE後の妊娠率が約50%と高いが患者さんを選んでいるのか? 2.PAEでは何種類かの塞栓物質が使用されているが何がいいのか? の2点でした。 1.に関しては、症状のある筋腫を対象としているだけである。 2.何でもよい(エンボスフィアでもPVAでも、、) ということでした。私は子宮筋腫に対するUAEは2000例を経験しているが、先生の妊娠率の高さには驚いていると話すと、2000例という数にいささか驚き、私にメールアドレスをくれて、一度ポルトガルにいらっしゃいと言ってくれました。 本当は2200例以上ですが、少なめに言いました。