UAE以外のIVR

府中恵仁会病院ではUAE以外のIVRも手がけています。 心臓血管系は心臓血管病センターで、脳血管は脳卒中センターで行っています。

今週は2例のUAEと1例の消化管出血に対する塞栓術を行いました。

消化管出血の患者さんは十二指腸の憩室からの出血で、内視鏡でおおよその止血はできましたが、十二指腸のより奥の部位からの出血に対する止血が困難で、血管からのアプローチによって止血しました。十二指腸アーケードと呼ばれる部分からの出血のため、まず腹腔動脈側から胃十二指腸動脈経由で上膵十二指腸動脈へカテーテルを進めコイルを留置しました。
出血部は下膵十二指腸側からも血流を受けるので、引き続き、上腸間膜動脈から空腸動脈第1枝
(J1と呼びます)へカテーテルを進め、下膵十二指腸動脈、さらに膵アーケードまでカテーテルを進めコイルを留置しました。

UAEの場合もそうですが、今回の消化管出血で膵アーケードまでの選択的なカテーテル挿入はマイクロカテーテルといわれる非常に細いカテーテルを使用してこそ可能になっており、さらにそのマイクロカテーテルのためのガイドワイヤー(マイクロガイドワイヤー:微細血管用ガイドワイヤー)を使用してこそ可能です。

ガイドワイヤーが到達すれば、カテーテルもそれに追従して挿入されると思われがちですが、必ずしもそうではありません。力学的、物理的な力のかかる方向、ガイドワイヤーとカテーテルの摩擦係数などが複雑に絡み合っているのです。

ガイドワイヤーとカテーテルの摩擦にも2種類あって、一つは静止摩擦、もう一つは動摩擦です。
ガイドワイヤーが目的の部位まで挿入されているのにカテーテルがそこまでいかない、カテーテルが動かないというのはカテーテルが進む方向への力が最大静止摩擦力を超えないからです。

こういうときには、カテーテルを押さないで、ガイドワイヤーを引き戻します。 ガイドワイヤーを引き戻しながらカテーテルを押します。つまり最大静止摩擦力を超える力をガイドワイヤーを引き戻すことによって作り、動摩擦の状態にします。そうするとカテーテルがするすると目的の部位に進んでいきます。 この操作を繰り返すことにより目的の部位までカテーテルを誘導させることが可能です。

こういったことは理屈でわかっていても体得するのは時間がかかります。

来週は2例のUAE、1例の肝動脈塞栓術が予定されています。